【Vol.2】板橋区議内田憲一郎の区政報告と不動産のはなし

2022.03.23: 事例研究・ニュース分析

宅建板橋区支部報第84号に寄稿をさせて頂きました、「板橋区議内田憲一郎の区政報告と不動産のはなし」をブログでもご紹介させて頂きます。

今回は、不動産業に携われて間もない方向けに、官公庁が公開する不動産に関する資料のご紹介をいたします。これらを見ることで、区内のどこにどれくらいの空き家があるのか、賃貸物件の需要と供給のバランスが見えてくるかと思います。

板橋区の公開している一次情報にあたることで的確な判断が可能になり、なんとなくではなく、数字の根拠を持ってプレゼン資料作成等に活用していただけるのではないかと思います。ぜひ、無料で手に入る公的な情報をご活用いただければと思います。

（※以下、執筆時点で公開されているデータを元に執筆しております。最新の情報は各自治体のウェブサイト等でご確認下さい。）

1 はじめに
2 官公庁が公開している資料から土地標準価格を調べる
3 板橋区独自の資料から区内の空き家情報を知る
4 まとめ

はじめに

令和2年度4月より、相談役を拝命させて頂いております、板橋区議会議員の内田憲一郎です。この度、宅建板橋区支部報へ寄稿させていただけますことを心より感謝致します。

本コラムでは、板橋の区政報告として、特に住宅や暮らしに関する情報を中心にお伝えいたします。不動産業界皆様の、お役に立つことが出来れば幸いです。

二回目となる今回は、官公庁が公開する不動産に関する資料のご紹介をいたします。私自身、不動産業に携わる中で、どの情報を取捨択一すればよいのかわからず悩み、様々な本を読み漁る中で試行錯誤して参りました。

諸先輩方におかれましては、「そんなの当然だよ」といった内容かもしれませんが、不動産業界に携われたばかりの方にもご活用いただけるよう、基本的な資料もご紹介いたしますのでご活用いただければと思います。

各資料には名称＋URLと共にQRコードを付けておりますので、名称で検索して頂くか、QRコードを読み込んで頂き当該資料の参照ページを見ながら読み進めて頂けますと幸いです。

（※実際の原稿にはQRコードを付けておりますが、本WebサイトではURLのみとなります。）

官公庁が公開している資料から土地標準価格を調べる

まずは、基本の基、皆様方も普段お仕事で活用されることが多い土地標準価格の主な情報については以下のものがあり、これらを参考にすることで土地価格の傾向を把握することができます。

「地価公示価格」：毎年1月1日現在の宅地標準価格を、国土交通省土地鑑定委員会が判定し、毎年3月頃に国土交通省が公表します。

「基準地価格」：都道府県知事が基準地を選定し、毎年7月1日現在の宅地基準について、毎年9月頃に都道府県知事が公表します。

「路線価」：国税庁が土地の面する道路の１㎡あたりの価格を地価公示価格や売買実例などを参考に、毎年1月1日を評価時点として価格を決定し、毎年7月頃公表します。

「固定資産税評価額」：各地方自治体が国の「固定資産評価基準」に基づき、固定資産税路線価を参考に公表する土地の価格です。（3年毎の1月1日に評価替えを行う）参考ページ）

土地標準価格閲覧
https://www.city.itabashi.tokyo.jp/bousai/tochi/tochi/1006165.html

板橋区独自の資料から区内の空き家情報を知る

次に少し掘り下げて、板橋区が独自に公開する資料を３つご紹介いたします。今回はこれらの資料を使って、板橋区の住環境に関して全体的な数値を把握しつつ、特に空き家に関する情報を読み解いていこうと思います。

板橋区住まいの未来ビジョン2025（住宅白書）より

https://www.city.itabashi.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/122/attach_90477_11.pdf

はじめにご紹介するのが、「板橋区住まいの未来ビジョン2025」です。こちらは板橋区の住宅政策を体系化したもので、その中の「住宅白書」からは、板橋区の住環境に関して全体的な数値を把握することが出来ます。ただし、こちらの住宅白書は平成30年発行となっており、数値等が公開されてから時間が経過している為、後述する2つの資料も併せてご覧頂きたいと思います。

第1章では板橋区の人口・世帯の推移など、基本的な情報が公開されています。板橋区の人口、世帯数は増加傾向にあり、平成28年1月1日時点の人口は 550,758人世帯数は292,068 世帯でした。1世帯あたりの世帯人員は減少傾向にあり、昭和50年に2.88人と3人を下回り、平成22年には1.97人/世帯と2人を下回っています。

第2章では住宅に関する数値が出ています

「1.住宅ストック（P.9〜P.10）」では、平成25年時点での板橋区の空き家数および空き家率が公開されています。板橋区は空き家率11.4％、23区内では8位となっており、内訳としては「賃貸用の住宅（新築・中古を問わず）」が77.3％と最も多くなっています。

「4.マンションストック（P.16）」では、年々、賃貸・分譲ともにマンションストックが増加しており、特に、ワンルームマンションは平成23年度以降増加傾向にあることがわかります。

新たな住まい方を展開する空き家対策についての提言（答申）

https://www.city.itabashi.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/030/196/r30121_tos_6-2.pdf

次にご紹介するのが「新たな住まい方を展開する空き家対策についての提言（答申）」です。こちらは平成30年11月に「板橋区における住宅政策の新たな展開について～新たな住まい方を展開する空き家対策について～」の諮問を受け、板橋区住宅対策審議会にて２年間審議された提言（答申）になります。

上記、板橋区住まいの未来ビジョン2025（住宅白書）P.9〜P.10では平成25年時点での板橋区の空き家数および空き家率が公開されていますが、こちらのP.3では、平成30年時点でのデータが示されています。平成30年時点での板橋区内の空き家は、空き家総数36,640 件（平成25年では34,810件）となっており、空き家率は10.9％（平成25年では11.4％）、賃貸用の空き家は77.3％(平成25年77.3%)となっています。

比較をすることで、空き家の総数が増えているにも関わらず、空き家率が減少しているということから、住宅総数が伸びているということがわかります。

少子高齢化が進み、手つかずのままの老朽建築物が増える一方で新築の住宅が増えているという状況です。人口数が増加し続けるという考えの上ではこの方向性は一定成り立つかもしれませんが、不確定な要素が多いと感じています。

板橋区空き家利活用実態調査報告書

https://www.city.itabashi.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/030/196/r30121_tos_5-2.pdf

次にご紹介するのが、「板橋区空き家利活用実態調査報告書」です。こちらは利活用可能な空き家の把握・解析をすることで、空き家や空き室がどこに発生するのか、どのように分布するのかメカニズムを解析することを目的として調査報告されました。（令和２年３月公開）

こちらの資料ではこれまでの調査に加えて、最新の調査が行われ、報告がなされています。非常に細かく、様々な観点から調査されているので要点をご紹介させて頂くと

・板橋区では人口数、世帯数が増加している（P.6-7）

・死亡数が出生数を上回る、自然減の状態が続いている（P.8 ）

・転入数が転出数を上回っており、社会増の状態が続いている（P.10）

・外国人人口が増加しており、2017年には板橋区の総人口に占める割合が４％を超えている（P.12）

・板橋区内の住宅個数は継続的に増加傾向にある（P.13）

・板橋区内の住宅は1991年〜2000年までに建築されたもの（築21年〜30年）の割合が21.9％と最も比率が高い。（P.14）

・住宅総数と世帯数の推移を比較すると常に住宅総数が世帯数を上回っている状況にあり、住宅が世帯数の推移と比較し、過剰に供給されている傾向にある。（P.15 図表13）

これらの数値と分析を見るだけでも板橋区内の住環境がある程度把握していただくことが出来ると思います。これらを踏まえた上で、調査結果（P.30〜）を見ていただきたいと思います。

こちらでは、２つの図をご紹介します。

板橋区内の空き家の位置をプロットした空き家分布図（P.30）

町丁目別の空き家件数（P.31）

こちら２つの図をみるだけでもどのエリアに空き家が多くあり、対策をするべきなのかということが見えてきます。なお、本調査では「空き家率」と、「平均築年数」に相関があると言える結果になったそうです。是非ともご一読を頂きたいと思います。

また、P.68〜は賃貸集合住宅の空き室推計と空き室発生メカニズムの解析がおこなわれており、空室率別の賃貸集合住宅の分布が示されています。町丁目別の空き室率20％以上の賃貸集合住宅がどのくらいあるのかという表は、多くの賃貸物件オーナーさんや不動産管理業者さんが気になるところではないでしょうか。

なお、P.72〜は空き室発生メカニズムの解析も行われており、「空き室率」と、「１世帯当たり人員」相関があると言える結果となったそうです。この結果から、本調査では「単身世帯が多い町丁目で空き室が多く発生する可能性が高いと考えられる」と綴られています、こういった調査結果を踏まえると、今後はより一層、需要と供給のバランスが取られた計画が大切なのだと思います。

まとめ

今回、基本の基から始まり、板橋区が公開する３つの資料をご紹介しました。個人や中小企業において独自にこれらの実数を把握することはなかなか厳しいのではないのでしょうか。

板橋区の公開している資料を活用することで、ネットの情報に右往左往されずに、一次情報をあたることで的確な判断が可能になり、なんとなくではなく、数字の根拠を持ってプレゼン資料作成等に活用していただけるのではないかと思います。ぜひ、無料で手に入る公的な情報をご活用いただければと思います。

調査の方向性やご意見がございましたら、お気軽にお知らせください。お読み頂きまして、ありがとうございました。

活動報告

【Vol.2】板橋区議 内田憲一郎の区政報告と不動産のはなし

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