新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が高い2021年8月前後の時期に執筆した原稿ですのでご注意下さい。新型コロナウイルスに関する最新の情報は各自治体のウェブサイト等でご確認下さい。
はじめに
令和2年度4月より、相談役を拝命させて頂いております、板橋区議会議員の内田憲一郎です。この度、宅建板橋区支部報へ寄稿させていただけますことを心より感謝致します。
本号より、板橋の区政報告として、特に住宅や暮らしに関する情報を中心にお伝えしたいと思います。不動産業界皆様の、お役に立てれば幸いです。
(※以下、2021年8月16日時点で公開されているデータを元に執筆しております。最新の情報は各自治体のウェブサイト等でご確認下さい。)
コロナの状況(感染状況と実数)
東京都の報告によると板橋区の令和3年8月12日の患者の累計数は10135名。既に退院(療養期間経過を含む)あるいは死亡された方の累計数は8403名(東京都8月13日更新)となります。(「東京都新型コロナウイルス感染症対策本部報」を参照)令和3年8月1日時点での板橋区内人口数が569,129人ですので、これまでに板橋区内の約1.78%の方が感染したことになります。
ワクチン接種状況
直近の板橋区・東京都・全国のワクチン接種状況の比較をお示し致します。全国的に、この1ヶ月は接種が進んでいます。また、板橋区は東京都・全国と比較しても高い接種率となっていますが、東京都で見ると接種率は全国を下回っています。
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1回目ワクチン接種率
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2回目ワクチン接種率
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板橋区
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総人口の28%(145,497回)
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総人口の14.4%(74,862回)
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東京都
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22.47%
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11.8%
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全国
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19.19%
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9.94%
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(出典:令和3年7月8日時点の板橋区のデータ)
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1回目ワクチン接種率
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2回目ワクチン接種率
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板橋区
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総人口の51.1%(266,194回)
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総人口の38.5%(200,128回)
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東京都
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40.97%
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28.43%
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全国
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40.61%
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30.91%
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(出典:令和3年8月14日時点の板橋区のデータ)
ワクチンを打つべきか、打たざるべきか、不安だと言う方もいらっしゃるかと思います。大前提として、接種は強要されるものではなく、自分で決めることが大切だと思います。
私は、接種後のアナフィラキシーに注意すること、深刻な副反応があるかどうかは今後も注意して見ていかなければならないと思います。しかし一方で、重症化や感染を予防するワクチンのメリットを考えると、現時点では接種をすることが、今のように行動制限される生活を変える鍵になるのではないかと考えています。
区内の不動産に関するコロナの影響と住宅に関する給付金事業
板橋区内では住居確保給付金と住居契約更新料給付金の2つの事業で住居・就労機会の確保に向けた支援を行っています。
住居確保給付金とは、離職などにより住居を失った方、または失う恐れのある方に、一定期間、就職活動をしている間の住居の家賃相当額を支給する制度です。こちらは、令和2年4月20日より、新型コロナウィルス感染症の影響など個人の責めに帰すべき理由・都合によらない就業機会などの減少により経済的に困窮された方も対象となりました。
さらに、令和3年1月1日より、令和2年4月から令和3年3月までに新たに支給申請しているなど、一定の要件を満たす方については、支給期間を最長9か月から最長12か月へ延長することとなり、加えて、住居確保給付金受給期間終了後に解雇以外の理由で生活に困窮し、支給要件に該当する場合も、特例として3か月間の再支給が可能となりました。(申請期限は、令和3年9月30日まで)こちらは国の事業で、国が3/4、板橋区が1/4支出するものですが、令和元年度受給した方が17名だったものが、令和二年には、950名(実数)まで増えています。
しかし、長引くコロナ禍の影響で、新たに「更新料が支払えない」という問題が出てきました。そこで板橋区は独自の事業として、住居契約更新料給付金事業を始めます。こちらは、令和3年4月1日から令和4年3月31日までに住居確保給付金を受給し、かつ、その受給期間中に契約更新を迎える方を対象に、賃貸借契約の更新にかかる費用の一部を支給するものです。
私自身が聞いた事例
私自身も不動産業に携わる中で入居者の方から相談を受けました。ある方は「コロナでボーナスがカットされてしまい、生活が厳しくなってしまった為、家賃の値下げをお願いできないか?」というものでした。入居者の方は有名企業にお勤めの方で、ボーナスカットの事実はニュースに流れていました。コロナが流行し始めた当初の時期、皆さん不安な時期でしたが物件オーナーさんへ相談し、期限付きで家賃の減額をしていただくことになりました。
他のケースでは退去日が既に決まっていた方からの連絡で「退去日の数日前にコロナに感染していることが判明し、保健所から自宅療養の指示を受けてしまったのですが、どうしたら良いでしょう?」というご相談でした。こちらはオーナーさんへご相談の上、退去日を2週間延長することで入居者さんにはしっかりと療養して頂くことになりました。
ただ、こちらの物件、退去日のすぐ後に内見予約が入っていましたので、内見希望者の方には事情をお伝えし全て一度キャンセルすることになります。加えて、退去後の清掃も業者さんと入念な打ち合わせと準備の上でしっかり清掃と消毒を行って頂きました。
実は、こちらの入居者さん、ご連絡を頂いた時点で既に発症から1週間以上経過していましたが、大事を取って2週間後の退去日設定となりました。ただ、入居者さんが不安でどうしたら良いかわからず連絡が遅れてしまったのかもしれないと考えると、入居者が連絡しやすくなるように、行政や不動産業界内で一定のルールや基準が定められて普及すると良いのではないかと考えております。
オーナーが負担することについて
家賃に関しては住宅確保給付金があります。しかし、退去日の延長のケースは次の入居者探しの機会損失、及び特殊清掃代は誰が負担するべきなのでしょうか。いずれにせよ、今回はどちらのケースも物件オーナーが負担をする結果となりました。
果たして、今回は特殊ケースだったのでしょうか。板橋区内の総人口に対する感染者率は1.78%、さらに「民営の借家」に住む世帯の構成比が45.2%(H27年データ)という数値から、机上の計算ですが区内でコロナに感染した方で賃貸物件に住んでいる方は約0.8%、約125件に1件のケースです。管理物件の多い管理会社さん、所有する部屋数の多いオーナーさんであれば他人事ではないはずです。
コロナ感染という「誰にでも起きうる状況」は心優しいオーナーさんの「善意」だけで現状を凌いでいるという実際のケースがあることを忘れてはなりませんし、私も板橋区に対して提言をして参ります。また、今後是非とも皆様と議論を深め、こういった課題の解決に取り組ませていただければと思います。